はじめてのフルート選び

「フルートをはじめたいけど、どんな楽器を買えばいいのか分からない」という方も多いかと思います。私も分かりませんでした!

習っているうちに理想のフルート像も見えてきますが、まず吹いてみないと何も分かりません。その最初のフルートとの出会いの手助けになればと、私なりに【選ぶときに見ておきたい違い】を書いてみます。

(1)材質の違い

洋銀(洋白)製

銅‐ニッケル‐亜鉛の合金です。「German silver」訳して「洋銀」としていましたが、今日では「洋白」というのが主流になってきています。安価で管体が軽く、小学校低学年など、小さなお子様にはお奨め。

●洋白銀メッキ・・・洋白製フルートに銀メッキをかけたもの

→値段が上がると、パーツごとに銀製になっていきます。

●頭部管銀製・・・洋銀製のフルートの、頭部管だけ銀で出来ているもの

●管体銀製・・・洋銀製のフルートの、頭部管以外が銀製のもの

→銀の割合が高くなるにつれ、値段も重量も上がりますが、音は深みが出てきます。

総銀製

全てのパーツが銀で出来ているフルート。表現力が豊かな温かい音色で、いわゆるフルートらしい音がします。

値段の上昇に伴い、バネ等の部品やシステムもグレードがアップしますので、キーを押す力が必要なくなってきます(グレードの高いものは指の上下だけすれば良く、力が全く要りません)。

音大受験の方はこのクラス以上のものを使わないと練習になりません。手軽な楽器では、速いパッセージで楽器が付いてこない、響きや音量(遠達性のある音)が足りない、ということがあります。(とか言いながら音高生の娘は銀メッキの楽器でコンクールにも出ていますが……汗)

なお、銀は変色しやすいので、お手入れはきちんとしましょう。

金製

値段も高く重量も重いですが、その分、音に深みと重厚さがあり、密度も高いため、遠達性に優れます。吹いたときに抵抗を感じるので、向かない人も居ます。とにかく体力は必要ですので、万人にオススメはできません。「抵抗がある」から、しっかりと鳴らせればかなりの音量があります。

しかし、錆びないのでお手入れが楽です(笑)。

9K、14K、18K、24Kなど、金の割合によって色々売り出されています。14Kで200万円程度でしたが、上昇する金相場に釣られてフルートも値上がりしている傾向があります。パウエル社の14Kは400万円を超えました。

その他

ニッケル製、木製、プラチナ製もあります。

ニッケルは格安フルートの原料ですが、吹くのが苦しい割には良い音がしないので長続きしにくく、私はあまりお奨めしません。入門だからとこのタイプを買って何とか継続して来られた方も、1年ほどで買い替えが必要になりました(理由は後述)。何が何でもフルートを吹くんだ、という意思の強い方はどうぞ。

木製は、バロック好きの方なら憧れるのではないでしょうか。音も大きいです。私は木製+メカニズムが金、というのが欲しいです(笑)。スカスカした音が木製、という誤解がありますが、どうしても憧れているならともかく、鳴らしきれないくらいなら銀にしたほうが……ともちょっと思いますね(毒)。

プラチナ製は好みによります。金製よりも抵抗があると言われますが、このクラスを買いたいと思うのは上級者ですから、気にならないかもしれません。「抵抗を感じる」とされるゴールドも、私にとっては必要な抵抗ですから抵抗とは感じませんし、プラチナも気持ちよく吹けました。ただし、重いです。もし資金が豊富にあったとして、常に使うか、といわれたら、私は使わないかもしれないです……というくらい、本当に好みが分かれます。

 値段は、アジア圏からの輸入ものニッケル製が2万円程度~、木製とプラチナは、およそ金製以上です。

コラム;これからはじめられる方

洋銀製か、洋白銀メッキの、7万円以上のものが扱いやすいでしょう。
しかし、指導者によっては15万円~のものを勧める場合もありますし、目指す方向(趣味なのか、吹奏楽なのか、受験なのか)によっても変わって来ますので、これから先生につく予定があるなら、その先生にお伺いしてから購入されることを強くお奨めいたします。
学校の吹奏楽部に所属する予定の方も、出来れば先輩に事情を聞いたり、顧問の先生に聞いてみてからのほうが良いでしょう。同じメーカーの楽器のほうが音色が揃うという先生もいらっしゃいます。
なお、値段の高いものを買う分には全く差し支えありません。20万円以上(サンキョウならエチュード以上。ムラマツならEX以上。この二社はここが最安ラインですが)を習い始めに買ったほうが、あまり苦労せずに上達するような気もします。
私の教室では、最初に良いものを買ってスタートされた方や比較的早い時期に買い替えられた方のほうが、やはり上達も早いですし、楽しく練習しておられるように思います。

コラム; 中級以上の方

洋白製→頭部管銀製→総銀製(セミハンドメイドもしくはハンドメイド) と、ほとんどの方がグレードアップしていきますが、金額的なことで無理な場合は、銀製のフルートの頭部管だけをアップグレードしたり、頭部管をひとつ上のクラスにする等、細かいアップだけでも音がずいぶん変わります。
銀製の頭部管を例に取っても、リッププレートだけ金、吹き口の周りだけ金、など色々ありますので、予算がない場合や、総金製に抵抗がある場合に試してみてはいかがでしょうか。
ところで、たまに口コミや評判にこだわりすぎる方もいらっしゃいますが、実際にプロの方が吹き込み比較して情報を流しているわけではありませんので、あまり気にする必要はないと思います。ネット上の情報に左右されるより、楽器店や、身近なフルーティストなど、プロに直接聞いてみて、ご自分でも試奏されてみることをお奨めします。
メーカーが大々的に売り出している楽器でも吹いてみると響かなかったり、趣味の方が良い楽器を吹くより、私たちプロが「これはよくない」と言われている楽器を吹いたほうが良く鳴ったり……といったことも結構あったりします。

→「はじめてのフルート選び」(2)へ